食べ物は、胃の中で細かく分解されて、腸から血液の中に吸収され、細胞の中に運ばれます。ご飯などの炭水化物は分解されてブドウ糖になります。ブドウ糖は体のエネルギーを作る材料です。そして、このブドウ糖が細胞に入るための重要な役割をするのがインスリンです。インスリンの量が少なくなったり、働きが悪くなるとブドウ糖が細胞にうまく入れなくなり、血液中のブドウ糖が異常に多くなってしまう、これが糖尿病です。
厚生労働省「2007年国民健康・栄養調査」によると糖尿病を疑われる人、可能性を否定できない人を合わせると、2,210万人で5年前の1.4倍10年前の1.6倍と激増しています。40歳以上では10人に1人と言われています。また、 全世界では、1億7000万人の患者がいます。
糖尿病で怖いのは合併症です。
日本の糖尿病患者の約4割は血管合併症により死亡しており、糖尿病性網膜症による失明は年間3,000人を超え、糖尿病性腎症による、新規の透析導入者は平成16年には13,920人あり、透析導入原因疾患の41.3%をしめています。血管障害で下肢を切断しなければならなくなる人は、0.5%もあります。
さて、膵臓は、ほぼ体の真ん中に位置している臓器であり胃の後ろ側にあると思ってください。膵臓はおもに食べ物を消化する消化酵素を十二指腸に排出する役目と、血液の中に4種類のホルモンを分泌し、体の代謝をつかさどる臓器ですが、その1つがインスリンです。
インスリンは、膵臓の腺細胞の中に、島のように点在するランゲルハンス島の中の細胞より、分泌さ<糖尿病の分類>
1997 年に1985年まで使われていたWHOの分類をあらため、以下のように分類しなおしました。
1. 1型(絶対的インスリンの欠乏)
A 自己免疫性
B 特発性
2. 2型(インスリンの相対的不足)
3. A 遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの
B 他疾患、条件に伴うもの
・膵外分泌疾患
・内分泌疾患
・肝疾患
・その池
4.妊娠糖尿病
これまではWHOおよび日本糖尿病学会では、糖尿病をインスリン依存性糖尿病(IDDM)、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、その他の糖尿病に分類していました。1型糖尿病はインスリンの絶対的不足を伴い、生命の維持のためにインスリン注射を必須とするものでありますが、糖尿病の3%程度と考えられています。
原因の多くは膵B細胞の自己免疫機序による破壊によって起こると考えられ、各種の自己抗体が証明されることが多いです。膵臓に感染したウイルスと似た抗原性をしめす膵臓B細胞を免疫が間違って攻撃して、B細胞が10〜20%ぐらいに減ると高血糖になり、糖尿病が発症すると考えられています。
1型糖尿病は小児期から青年期に多く発症しますが、成人にも発症することがあります。
糖尿病は、いくつかの遺伝因子と環境因子が重なり合って発症します。遺伝因子としてはHLA(ヒト白血球抗原)遺伝子やインスリン遺伝子などが1型糖尿病の発症に関与するといわれています。
環境因子としては、 ウイルス感染が発症の引き金となり、自己免疫反応がB細胞を破壊してしまう可能性が考えられていますが、推測の域を出ません。
糖尿病の95%以上は1型以外の糖尿病です。2型糖尿病はインスリンの作用不足はあるものの、絶対的欠乏は伴わず、膵臓B細胞からのインスリン分泌の不足と、末梢でのインスリン抵抗性によって起こるものをしめします。
わが国の糖尿病の大部分は2型に属します。2型糖尿病とは、インスリンを注射しなくても、すぐに重篤な病態になることはなく、生命に危険が及ばないという意味です。しかし、2型糖尿病でもよい血糖コントロールを得るために、インスリン治療を要することは少なくありません。1型糖尿病では膵B細胞がほとんど破壊されてインスリン分泌が廃絶するのに対し、2型ではインスリン分泌能はある程度保たれています。
2型糖尿病の原因は、インスリン分泌の不足とインスリン抵抗性が共に発症にかかわると考えられています。インスリン分泌不全は、主に遺伝子によって規定されると考えられています。インスリン抵抗性とは、インスリンは分泌されていてもインスリンが効きにくく、インスリンの作用が十分に発揮されないことを言います。
インスリン抵抗性とインスリン分泌不全と、どちらのウエイトが大きいかは、患者により異なりますが、両者が絡み合いインスリンの作用が不足し、高い血糖状態が持続します。
また、高血糖それ自体インスリン抵抗性、インスリン分泌不全を増強するという悪循環を招きます。これをブドウ糖毒性といいます。血糖コントロールを良くすることにより、この悪循環を断つことができます。
治療に関しては、1つの治療方法は足りなくなったインスリンを補う方法、つまリインスリン注射や経口血糖降下剤で治療する方法であり、もう一つはインスリン抵抗性を改善させる方法で、それが食事療法であり、運動療法であり、薬物療法であるわけです。
付け加えれば平成9年7月のWHOの会議で、糖尿病の診断基準が変わってしまい、空腹時126r/dlを糖尿病と診断するとなりましたので、これまでが140r/dlでしたので、だいぶ厳しくなりました。
それでは、何を基準にコントロールが良い・悪いと判断するのでしようか、標準体重が維持されていることや、合併症の進行のないことや、採血では以下の目標が達成されていることが重要だと考えられています。
<血糖コントロールの評価>
指 標 |
優 |
良 |
可 |
不 可 |
|
不十分 |
不 良 |
||||
HbAfc値(%) |
5.8未満 |
5.8〜6.5未満 |
6.5〜7.0未満 |
7.0〜8.0未満 |
8.0以上 |
空腹時血糖値(r/dl) |
8〜110未満 |
110〜130未満 |
130〜160未満 |
160以上 |
|
食後2時間 血糖値(r/dl) |
80〜140未満 |
140〜180未満 |
180〜220未満 |
220以上 |
糖尿病診療ガイドより
HgA1Cは過去1〜2ケ月の平均血糖値を反映するとされています。基準値は4.3〜5.8です。なお、発症予防の観点から、2008年度の特定検診プログラムでは空腹時血糖100r/dlに相当するHgA1C以上が保健指導の対象となりました。
治療で変わったことは、これまでご飯を食べるなと言って来ましたが、これは間違いであり、主なカロリーはご飯でとれ、総カロリーの60%は炭水化物でとるように、となりましたので、一回の食事で200gのご飯を食べなければいけないと言われるようになりました。