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 急性肝炎は、急性一過性で特別な治療無しに、通常1〜3ケ月以内に治癒します。A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、成人感染のB型肝炎ウイルス、その他のウイルス疾患は、急性肝炎の経過をたどります。C型肝炎も初感染で急性肝炎の経過をとり、その後2/3が慢性化すると考えられています。

 なお、急性肝炎の1〜2%が劇症化し、予後不良の場合もあります。

 一方、慢性肝炎は臨床的には6ケ月以上肝機能検査の異常とウイルス感染の持続している状態をいい、B型肝炎の母児感染、幼少時水平感染や、C型肝炎が我が国の慢性肝炎の主因と考えられています。



日本におけるHBV(hepatitis Bvirus)感染率は約1%であり、約140万人の感染者がいると考えられている。ちなみに世界では約4.2億人の持続感染者がおり、さらに問題を複雑にしています。

HBV持続感染の多くは、周産期の垂直感染や3歳末満の水平感染によるものであります。その後、経過観察中に自然寛解し、無症候性キャリアになる症例もあれば、肝炎の再燃、寛解を繰り返すことにより、肝硬変、肝がんへと進行する症例もあるため、患者各々の、年齢、経過、病態から治療の必要性を判断し、さらに適した治療法を選択する必要があります。

B型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法には、インターフェロン(IFN)療法と核酸アナログ(ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、さらに未認可のテノホビル)療法などがあります。



 近年、HBVの遺伝子型(genotype)の存在が確認され、本邦におけるB型急性肝炎の概念が変わりました。現在では、A−Hの8つのgenotypeの存在が世界中で確認されており、たとえばタイプCのB型肝炎などとなり、混乱しやすい分類となっています。

欧米は、AとD、アジアはBとC、東アフリカはAとDなど地域によりgenotypeが異なっていることが明らかになりました。

一方、同じHBV感染症であっても、世界的に臨床像が違っていることは、以前から認識されていました。たとえば、アジアではHBVは母児感染で感染し、慢性化し、肝がんが多いのに対し、欧米では成人の性感染症として、感染し約10%の人が慢性化するが、肝がんは少ない。

一方、アフリカでは小児期のHBV感染が主で、高率に慢性化し、さらに若年の肝がんが多い。これは先に述べたように、各々のHBVgenotype間の塩基配列が8%以上も異なるとなると、genotypeそのものが臨床像の違いを反映していると考えると理解しやすいです。

一方、本邦においても国際化はとどまるところを知らず、年間約2,000万人も海外に出国し、約700万人も海外から、来日する状態であります。その結果、異なるgenotypeに感染し、本来、日本に存在しないgenotypeが流入していることが明らかになりました。さらに約10%といえども慢性化すれば、それらの人が核になり、本来日本には存在しないgenotypeのHBV感染を拡げることになります。事実、外国人女性から日本人男性に感染し、この日本人男性から日本人女性に感染させた症例も報告され、全国調査でも、欧米型が増加していることが明らかにされました。

 これらの事実は、現在、本邦のHBV感染予防の主流である母児感染予防対策だけでは不十分で、新生児全員へのHBVワクチン投与も考慮する必要があることを示し、本邦でもHBVをSTDとして認識する必要があるし、中学生へのHBVワクチン投与も考慮する必要があると考えられます。



 B型慢性肝炎の治療目標は、HBVの増殖を持続的に抑制することによって、肝病変の進展を抑制し、肝病変を改善させることであります。治療効果は、血清トランスアミナーゼ(ALT)値の正常化、HBe抗原の陰性化またはseroconverson(HBeg陰性化かつHBeb陽性化)、HBV-DNAの陰性化にて判定します。

 治療にあたっては、平成22年度 厚生労働省班会議でB型慢性肝炎の治療ガイドラインが出されており年齢(35歳)、ウイルス量(7logcopies/m1)、HBegの有無により、治療方針を決定する。

35歳来満の、B型慢性肝炎症例では、自然寛解が期待される症例は経過観察とし、自然寛解が期待できない症例ではdrug feeを目指したインターフェロン療法を基本とする。35歳以上は、インターフェロン療法による治療効果があまり期待できないため、HBV・DNAの持続的陰性化を目指した、エンテカビルによる、核酸アナログ療法が第一選択となります。

また、硬変症例ではIFNによる免疫賦活により、AST/ALTのリバウンドが誘発され、肝予備能がさらに悪化する可能性が高いため、年齢、HBe抗原の有無を問わず、エンテカビルによる核酸アナログ療法を積極的に考えるべきであると考えられていますが、まだ、今後も新薬、遺伝子療法などの未知の治療が開発される可能性もあり、注意を払いながら推移を見守る必要があります。





                                                                   2010.7.1